俺がとり憑かれていた時の話をテキトーにする:8(終)

土曜なので、電話番といっても、平日みたいにガンガン電話がかかってくるわけでもなく、緊急事態に備えて事務所番しているようなものだった。
細々としたことを片付けているだけで済みそうな感じではあったが、急にお腹が痛くなる。
トイレに駆け込んで事無きを得たが、その後も何度も下腹が差し込んでくる。
正露丸を飲んでもまったく効かない。とにかく痛い。鎮痛剤も飲んだが、今度は吐き気までしてきた。

これは耐えられない! と思ったが、フロアには私しかおらず、誰にも伝言できない。
会議室は緊急事態以外誰にも入ることが許されていない。とはいえ、これは緊急事態である。
耐えに耐えてどうにもならないと思った私は、仕方なく会議室の扉をノックした。
扉の一番近くにいた人に声を掛け、事情を説明してなんとか早退させてもらえることになった。
ふらふらしながら着替え、会社の前でタクシーを拾おうとしたが、普段ならいくらでも見かけるというのに、こういう時には一台も通らないのがセオリーなのか。

仕方なく大通りまで出て、交差点でタクシーを停めた。
この時のタクシーは個人タクシーで、とても親切な運転手さんが駅まで乗せてくれた。
そこではうようにして電車に乗り込んだはいいが、次は電車の揺れがひどく体に響いた。
痛みと吐き気とで、それ以上電車に乗っていることはできず、私は途中の駅で降りた。
そこにあったベンチになんとか横になったが、それ以上はもう動けなかった。
ホームにいた客の誰かが駅員さんに知らせたのだろう、しばらくして「大丈夫ですか?」と声を掛けられた。
それからなんとか実家に連絡をとり、父に迎えに来てもらった。
その日はそのまま実家で寝ていることになった。

翌日、嘘のように腹痛も吐き気も収まったので、いったいなんだったのだろうかと思った。
とりあえず何かAさんに関係があるのではないかと、霊能者にたずねてみることにした。
霊能者の答えは、「Aさんが私の体から出ていく腹いせに色々していった。だがもう出ていったから安心」というものだった。
そうなんだろうか。と、ちょっと不安に思ったが、月曜に医者へ行ってみて、異常なしだとわかったので、まあそんなもんかもしれないなあ、と思った。

いなくなったのならそれでいいや、という感じである。


以上が私がとり憑かれていた時に起こった出来事だ。
これから考察するということは、感情の上でまだまだできない部分がある。
なので、ただ、事実としてこれらの出来事があった、という程度に納めておきたい。

霊能者の言い分の検証も、どうやったってできないのだから、本当にとり憑かれていたのか、なんてことを考え始めたらキリがないのである。
そう思いませんか? 一体どうやってそれを証明できるんでしょうか。

ただ私が辛かった出来事の連鎖がありました、というだけに過ぎないのではないかと思っていただいてかまいません。だからどうだと言われれば、そういう体験をしました、というだけです。

というような感じで、俺テキは今回で終了します。

コメント

  1. はじめまして。
    のっけから憑依説を否定して申し訳ないのですが、Aさんはあなたのインナー・チャイルドだったのでは?
    結婚式を控えて幸せであるはずのAさんは、A母の自害によって自殺し生涯を終えましたが、事件の前から、あなたはAさんのことが「大嫌い」だった。

    かりに自殺したA母がむすめをコントロールして離さない毒親だったとすれば、説明がつくのです。
    Aさんのご家庭の問題は外からは窺いしれませんが、娘が幸福になろうとしている矢先に自殺する母親とくれば、のっぴきならぬ事情があったことは確かでしょう。すぐにAさんが後を追っていることからも、母娘間に何かあったと考えるほうが自然です。

    結婚して逃げていこうとする娘に対するあてつけとしての自殺。
    このA母の自殺は、お母さんは離れて行こうとするあなたのために死んだのよ、A子ちゃんはA子ちゃんのために死んだお母さんのことを忘れちゃだめよ、
    「いつまでもお母さんの言いなりになる娘でいろ」
    自殺は、そんな毒母の怨念の行き着く果ての行動と思われますし、長年母親の支配下にあったAさんは娘の幸福をそんなかたちで断ち切り死後も支配しようとする母親の、自殺という強烈な呪いを浴びてもうダメだと思い、発作的に自殺をはかったのではないでしょうか。

    問題はそのあと、あなたが「Aさん」を内に抱えてしまったことです。
    「悲しいの悲しいの」と泣くAさんは、憑依ではなくてもともとあなたの内にあった「親にひどいことをされて悲しんでいる自分」なのではないのでしょうか。

    初対面から無害で善良なAさんのことを「大嫌い」だと思うあなたの気持ちは少々行き過ぎです。Aさんに自分を投影して、同族嫌悪のような思いを持っていたからなのでは。
    『Aさん=あなた』
    それがAさんの死後、Aさんという姿をとって、強烈に訴えてきたのではないでしょうか。悲しいの悲しいのと。

    死が近い人の顔が真っ黒く見える程度のふしぎな力をあなたはお持ちなのですね。わたしも多少は霊感がはたらくのでコメントさせてもらうのですが、Aさんの死後のことについて言わせてもらうならば、それは憑依ではなく、あなた自身のトラウマの問題ではないかと思うのです。

    死が近い人だけでなくきっとあなたには「大嫌い」と思う人が他にもいることでしょう。
    その反面、盲目的に絶賛する「尊敬する人」もいるはずです。
    尊敬する人は、あなたを支配していた親に匹敵する強い支配力のある人。自分の代わりに人格障害者の親を打ち負かしてくれるほどの凄まじいサイコ力を持った人。
    大嫌いだと思う人は、実は”あなた”の投影なのです。

    死にゆく人の顔が黒く見えるって、面白いですね。
    テレビを観ていてもそんなことがあるのでしょうか。それとも身近な人限定ですか?
    霊能力を楽しまれているようで、なによりです。

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