黒猫
夜の8時ぐらいだったと思います。 仕事の帰りで、駅前を歩いていました。 商店が並んでいるあたりから、駐車場や倉庫が続く少し薄暗い場所へ切り替わるところで、ちらっと何かが目の端に映りました。 猫ぐらいの大きさの黒い塊が、側溝へ飛び込む姿でした。 ちょうどそのあたりにはクリーニング屋さんがあって、そこで黒い猫を飼っているのを知っていたので、「ああ猫が溝に飛び込んだんだな」と思っていました。 そのまま歩いていると、猫が飛び込んだ側溝の先の方で、黒い塊が街灯の下に飛び出してきました。 「あっ、猫だ」と思い、飛び出してきた黒い塊に視線を移しました。 しかし、それはたしかに猫ぐらいの大きさでしたが、コオロギのような足がムカデのように大量にはえた何かでした。 黒い塊は側溝の脇に生えた雑草の上をカサカサと素早く走り、街灯に照らされながら、また側溝に飛び込みました。 「えっ?なんだろう?」 興味が湧いたので塊が飛び込んだあたりに走り寄ったのですが、その姿はもう見えませんでした。