アネックスビルの閉館

 この記事を読んで思い出したこと。

昭和50年代、通っていた中学校で一つの都市伝説があった。
それは、中日ビルには緑の魔女と白い魔女がいる、というものである。
私は友達と、その緑の魔女と白い魔女を見に行った。
当時、休日のおでかけは制服で行かなければならず、私たちは全員セーラー服で中日ビルまで行った。
緑の魔女が出没する階は聞いていたので、その階へ行き一回りすると、とあるショップに緑の魔女がいた。そう、緑の魔女というのは単にアパレルの店員さんなのであったが、何故緑の魔女と呼ばれるのか。
それは全身緑色だからなのだ。髪、メイク、ネイル、洋服、すべて緑。

目的の一つを達成した私たちは、あとは白い魔女だけだ! と意気込み、彼女が出没するというエレベータを目指した。
そしてそこまでで私たちの情報が足りないことに気づく。
なんと中日ビルのエレベータは一つではない。普通に正面入り口から入ればすでにそこには6つのエレベータが存在するのだ。その上、南側の入り口や業務用も合わせれば、全部回っている時間などないくらいの数があった。

「白い魔女…どこ…?」

せっかくクソ真面目に制服でやってきたというのに、これでは探しようがない。
アホの女子中学生4人はとぼとぼと帰路についた。

さて、それから10年以上経ち、女子中高生のおしゃれショッピング・ポイントは別のビルへと移行した。それがこのアネックスビルである。東急ハンズが初めて名古屋へ進出した、記念すべき都会的なショッピングビルなのである。

当時私はとある同人誌サークルに入っていた。そこで会員である現役女子高生のひとりがこんなことを言っていた。

学校帰りにアネックスへ行った。エレベータに乗っているとお尻を触られた感触がした。振り返るとそこには女性が立っていた。たぶん何かの拍子に手が当たったのだろう、と思った。
目的の階に着いたのでエレベータを降りると、後ろから肩を叩かれた。振り返るとさっきエレベータで後ろに立っていた女性がいた。女性は「私の家に来ない?」と誘ってきた。
怖すぎて走って逃げた。

というような内容だった。

これ、まさしく、私が中学生の時に聞いた白い魔女のエピソードそのままなのだ。
驚いた私は女性の詳細を聞いてみた。すると、物凄い美人、長髪、白いワンピース、だったとのこと。完全に白い魔女である。しかもちゃんとエレベータに出没している。
その上、私たちが聞いていた情報そのままの、制服を着た女子中高生にしか声をかけない、というところまで忠実に再現されている。
なおかつ、白い魔女は美人にしか声をかけない。
うむ、この話を聞いた女子は確かにまごうことなき美少女であった。

いや、自分が探索に出てかれこれ10年以上たって、初めて実在するのだと知れたこの感動たるや、なんというか、オカルトを追いかけている身としては、実際にあったことなんだ! と感動した初めての出来事だった。

被害にあった彼女にはとても気の毒なことではあると、今はほんとに興味本位で聞きだして申し訳なかったと後悔している。都市伝説や怪談てどうしても不謹慎なところを探っていかなければならない場合もあって、複雑な気持ちになる。申し訳ない。難しいね。

というようなわけで、現在は中日ビルも建て替えているし、アネックスも閉館となれば、私も思い出の場所がなくなっていく、というような時代で、ほんと色々複雑な思いがきたすわけなのだった。

ところで今でも白い魔女さんはお元気でいらっしゃるのだろうか?
考えてみたらまだ普通にお元気な年齢であるわけで。

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