犬の話
野良猫が地面に寝ててドキドキした漫画を読んで思い出した。
20年以上前、私が借りていた駐車場の隣の家に、新しく引っ越してきた家族には年老いた飼い犬がいた。
犬は玄関の軒下に犬小屋を置いてもらっていて、いつもそこに繋がれていた。
私が通るとこちらを見て軽く尻尾を振るので、とりあえず「おはよ」とか声をかけていた。
とある冬の朝、犬はいつものように顔だけ出して小屋に入って寝ていたが、私が前を通り過ぎても目を開けなかった。
犬の頭には少しだけ雪が積もっていた。
かなり年寄りの犬だと思われたので、仕方がないのかもしれない。
通りすがりの私が犬の飼い主に声をかけるのもどうなのだろうか?
しかしひとこと言うべきか?
そう思いながらこの家の玄関前にしばらく立ち止まっていた。
散々迷ったがそのまま通り過ぎることにした。
夕方、駐車場に戻ると、犬は元気に小屋の前に立ち、私に向かって尻尾を振っていた。
とりあえず一安心したが、それから数日後、犬の姿は見えなくなり、たぶん死んだんだろうなあ、という気持ちで、残された犬小屋の前を通っていた。
犬小屋もしばらくしてなくなった。
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