犬の死
急に思い出したんだけど。
小学生の時、マルチーズを飼うのが流行した。
今だとトイプードルってのと似たようなものだ。
私は親にねだった。
親の知人のブリーダーから1匹の子犬を購入してもらった。
値段はあんま関係ないけど、昭和50年代で500円。
よくある、買ってもらったはいいけど世話は放置するタイプじゃなかったので、朝晩の散歩や餌やりなんかもちゃんと自分でやってた。
当然だけど私にはよく懐いてた。
ある日、犬の具合が急に悪くなった。
飼い始めて2年経たないくらいだった。
いつもは元気に近寄って来るのに、段ボールの寝床に入ったまま動かなくなった。
早く元気になるといいなと思いながら、犬を撫でてから、私は登校しようとしていた。
そこへ祖母がやってきて、隣に一緒に並んで座った。
「犬、早く治らんかなあ?」
私は祖母にそんなようなことを言ったと思う。
祖母はそれを聞くと、右手を犬にかざして目をつむり、何かを唱えているようだった。
祖母は朝晩の仏壇へのお参りを欠かさない人だったので、きっと仏さまにお祈りしているのだろうと、なんとなく思った。
1分もしないうちに、犬は大きくびくっと震えると、こちらを向いて目を開けたまま止まってしまった。
祖母は目を開いて「もう楽になったから、あんたは学校行きなさい」と言った。
集団登校の集合時間が迫っていたので、私はそのまま学校へ行った。
帰ってきて父から犬が死んだことを聞いた。
祖母が、犬が好きだったふかしたサツマイモを持って行きなさい、と渡してくれた。
埋めた場所は親族共同の墓地だとのこと。
私はすぐにその場所へ行ったが、なんの目印もないのでどこに埋まっているのかわからなかった。
泣きながらサツマイモを持って帰ったのを覚えている。
ばあさん、あんた、犬に、なんかしたんか?
おとんの猫が生んだ子猫も、川に流したよなあ?
今更になって思い出して、もう10数年前に亡くなった祖母に対して空恐ろしい気分になる。
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